顔写真 いまをいきる
曽和利光
元オカルト少年。現リアリスト。しかしロマン派の29歳。祖父と一緒にUFOの目撃経験あり。
仕事は怪しげな人事関連のコンサルティング。 将来は坊さんになりたい、仏教ファン。
「昨日や明日のためでなく今を生きる」を合言葉に、 刹那的に飲み歩く毎日・・・たぶん今日も二日酔い。
 


第5回・もぐの話


 最近、ぼくの愛鳥「もぐ」(♂:セキセイインコ)が死にました。6歳でした。大学の時から下宿にて「ぴい(三代目)」(♀)とつがいで飼っており、最近は、大阪の実家に引き取ってもらい、子ども4匹と幸せに暮らしていたところでした。

 「もぐ」という名前は、買った時やけに口をもぐもぐしていたという、なんのことはない理由でつけました。ぴいともぐは同じお店で買ったのですが、ぴいは季節の最初の頃に一番かわいい光のような鳥を買ったものです。もぐは季節の終わり頃の売れ残りで、毛並みもあまりよくない情けない感じの鳥でした。だいぶ迷いましたが、目のきれいさ(というか「買って」という視線)に惹かれて買ったものでした。

 最初飼った頃、妻のぴいはかわいいのですが、わがまま放題。でも、夫のもぐはとてもおとなしく、優しく、聡明な鳥でした。ぴいはぼくにかみついたりするのですが、もぐは何をしても(口の中に顔を入れたりしても)なーんにもしませんでした。
 家族を持っても、ぴいは肝っ玉母さんになっていったのですが、もぐはだめ親父のような立ち位置で、子どもにつつかれたり、いじめられたり。それでも文句も言わず、おとなしくしていました。それにも関わらず、子ども同士で喧嘩して負けてしおれているやつを慰めにいってました。とても心の優しい鳥でした。
 もぐは、たまに独りでよくしゃべりました。ほんとに異常なくらい独りでしゃべりました。もしかすると、あれは歌っていたのかもしれません。コミュニケーションというよりは叫びでした。「いつもおとなしいもぐなのになぜ?」と思うほどでした。きっと心の内にはものすごい情熱を持った鳥だったのだと思います。

 もぐを見ていると、動物にも性格ってあるんだなと思います。それほどもぐの行動は特徴的なものでした。他の鳥と比べても違いは明らかでした。想像でしかないのですが、もぐは売れ残りだったので、きっと小鳥屋の中でつらい日々を送ったのではないか、と思います。売れ残り軍団の中でも、気の小さいもぐはいじめられっ子で、忍耐力を鍛えられたのかとも。「人(鳥)は悲しみが多いほど、人(鳥)には優しくできる」という言葉を体現したようなやつでした。

 そんなもぐだったのですが、ここ数ヶ月おしりにできものができ、それがどんどん膨らんで、最終的には死に至ってしまいました。がんだったのかもしれません。手術ということも考えたのですが、五分五分の成功率ということもあって、自然に任せることにした結果でした。ぼくはもぐに同一化していたので、とても悲しいです。特にもぐの被虐的なところが飼い主に似ていたように思います。来世では友として出会いたいです。


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